道東の野鳥たちはワールドクラスである。世界最大級のワシであるオオワシとオジロワシ、世界最大級のフクロウである、シマフクロウそして美しいタンチョウとスターがそろっている。冬の北海道には、これらの鳥たちを求めて世界中からバードウォッチャーがやって来る。
鳥撮影の世界に足を踏み入れると、私にとっても道東は魅力的な場所になり、3回撮影に訪れた。写真を中心に、この3つの道東の旅をまとめてみた。なお旅の詳しい様子は4トラベルに記載したので、URLを記すことにする。これから示す写真はFlickrに投稿したものへのリンクの形とした。写真をクリックして頂くとFlickrにつながり、撮影条件が分かる。また、Flickrでの写真画面をクリックすると、多くの場合、画面がさらに拡大され、細部が分かるはずである。
さて、最初はシマフクロウである。シマフクロウは翼を広げると2m近くになる。比較的、観察が容易な日本ではわずかに140羽ほどしか残っていず、絶滅が心配されている。2016年11月27日から3日間、このシマフクロウを見ることを主目的に、バードウォッチング・ツアーに参加した(http://4travel.jp/travelogue/11195398)。
知床の羅臼近くに、鷲の宿という民宿がある。そこの女将さんが宿の前の小川に作られた小池に魚を入れ、これを目当てにシマフクロウが飛んで来る。私たちが宿泊した夜はシマフクロウのカップルがやって来て、何度も小池に飛び込んで魚を獲った。途中でキタキツネが通りかかったが、シマフクロウはじっと見つめるだけで驚かなかった。悠然と羽を広げたシマフクロウは気品に満ちていて、アイヌの人たちが部落の守り神と崇めたのは当然だと思わせた。
写真も良く撮れて幸せだった。レンズは500mm F4を使用した。この施設について詳しく説明したシマフクロウオブザバトリーのホームページを見て、このレンズでも注意して使えば長すぎることはないと思ったのである。
次はオオワシとオジロワシである。オオワシは羽を広げた幅が2mを軽く超す。イヌワシや白頭ワシなどの有名なワシより大きいことは確かで、重さではどうやら世界一である。オジロワシはオオワシよりやや小さいとされているが、羽を広げた幅では世界一という海外の文献もある。オオワシは冬とともにロシアから渡ってくる。オジロワシは少数が年中、生息するが、やはりほとんどが冬に渡来する。
このワシたちを見ようと、またバードウォッチング・ツアーを予約した。目玉は知床の海をクルーズしてワシたちを見ることである。ただ心配だったのは、クルーズが荒天などによって中止される可能性だ。ツアーだからクルーズは1日だけの設定である。中止にならなくても天気が悪く写真のできばえが悪いことは大いにありうる。ツアーへの参加をキャンセルして、現地に3日ほど滞在する方が良いのではないかという考えも頭をよぎった。しかし、申し込んだ旅を正当な理由もなくキャンセルするのは良くないと、ツアーにしがみつくことにした。この判断は当たった。とても幸運な旅が待っていたのである(http://4travel.jp/travelogue/11220692)。
2017年2月22日、ツアーは出発した。まず釧路近郊の鶴居に泊まり、タンチョウ観察、そして根室に移動した。24日朝、根室から知床の羅臼に向けてドライブである。途中で立ち寄った場所があった。氷結した湖の氷を割って漁が行われる。このとき、不要な魚が氷上に放置され、これを目がけてオオワシやオジロワシが飛んでくる。もう漁期は終わったのだが、これを模したアクティビティーがあるのだ。
それまで天気が悪く、その日も曇りか雪が予想されていた。確かに朝は激しい雪だった。ところがテレビの天気予報は午前中は晴れと変わっていた。半信半疑だったが車が進むにつれて晴れてきて、ついに快晴となった。
氷上に置かれた魚を見つけてワシたちが飛んできた。久しぶりの好天を楽しむかのように悠然と羽を広げている。青い空がバックで、将に絵になる。光の具合もいい。私たちは沢山の写真を撮ることができた。条件に恵まれて、ピントもピッタリだ。ワシの黒目が丸く光る写真となった。オートフォーカスが暴れるトラブルに遭遇したので、テレコンを外したのだが、かえって、それも良かったのかもしれない。
まずオオワシである。
凍った湖の上を飛ぶ姿もいい。
そしてオジロワシ。いかにもワシらしい姿である。
2月25日、早朝。いよいよ待望の流氷クルーズである。羅臼の港から船に乗った。地球温暖化に伴って流氷が羅臼まで南下する頻度は減った。昨年はほとんど来なかったらしい。今年は流氷が発達しているので期待が持てる。流氷は風に乗って移動する。昨日までは離れていたが、その日はかなり近いところまで来ているそうだ。船がしばらく進むと、流氷が見えてきた。素晴らしいことに、これまで雪の日が多かったので、流氷は新雪をかぶり、綺麗である。空も晴れてきた。
こんな条件のいい時に巡り会うとは、ただただ幸運である。比較的、流氷が近くに来やすい日を選んでツアーが設定されているのだろうけれど。
船からはパラパラと魚が撒かれる。これを求めてオオワシやオジロワシがやって来るのを撮影するのである。鳥が近いから長いレンズは要らないといわれたが、私は画質にこだわって500mm F4を持ち込んだ。確かに小回りは利かなかったが、納得のいく写真が撮れた。
流氷の上を悠然と飛ぶオオワシ。
そしてオオワシのバトル。襲撃は失敗している。用心していたオオワシが飛び上がったので、キックした方は雪の中に突っ込んでしまった。
この2回のツアーでは、いずれも鶴居村の伊藤タンチョウサンクチュアリーを訪れ、タンチョウの撮影もしている(http://4travel.jp/travelogue/11222055)。
鳴き合いや着陸する姿といった興味深い写真が撮れた。
晴れた空を飛ぶタンチョウの姿も撮影したいが、それはまた次の機会にであろうと思った。そして、コロナの時代の長いブランクを経て、やっと目的を達した。2023年1月29日から2月2日まで釧路に滞在して鶴居村を中心に撮影にふけることができたのだ。写真は鶴見台で撮影したタンチョウの飛翔である。
最後の写真は 菊池牧場で夕方撮影した。タンチョウの群れが下降しているところだ。
音羽橋で夜明けを迎え、厳寒の中で目覚めるタンチョウも狙った。エゾシカがやって来た。
やがて朝日が射し、霧氷や毛嵐を薄赤く染めた。毛嵐が濃くなったが、端の方では何とかタンチョウが見えた。
タンチョウのカップルの踊りも見事だった。鶴見台で撮影した。
2023年の旅行記は リンクを示そうとすると、次のようになってしまった。
『タンチョウが青空を飛び、川霧(毛嵐)の中に立ち、雪原に舞う: 釧路を拠点とした撮影と観光の旅 』鶴居・標茶(北海道)の旅行記・ブログ by Takashiさん【フォートラベル】 (4travel.jp)
こうして、冬の道東というワールドクラスの旅行地で、全ての目的を完遂し、納得のいく写真が撮れたのは幸せなことだった。